両親を亡くした少年と祖父を失った少女が“家族”としてひとつ屋根の下で暮らし始め、ふたりだけの世界へと落ちていく瞬間を見届けたい人向け。本記事では、第1巻の構成や“いつから恋人?”という境界線の揺れ、そして描き下ろしカバーに込められた“これから”の予感がわかります。

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作品概要
| タイトル | 【単行本版】今日から家族、そして恋人。 |
|---|---|
| 作者 | あずせ |
両親と祖父を同時に失い、居場所をなくしたタカとひな。互いに支え合う選択をしたふたりは子どもながらに「今日からぼくらで生きていく」と誓う。ささいな日常――押入れの整理、夕食の味見――が胸を締め付ける夜、ひなは“ただの家族”という蠟燭を亡き祖父の枕元に見送り、布団の中で“恋人”を名乗る。228ページには第1話から第8話に加え、単行本だけの描き下ろしやカットをあしらったあとがきも収録。“これから先”が気になるラストページも必見だ。
作品の魅力
最初のひらめきは“事故”というワードだった。マンガの中ではいつも短いセリフで片づけられてしまう事故劇が、ここでは着替えやすい部屋のインテリアひとつひとつに爪跡を残していく。たとえばひながタカの部屋に入る扉に針金で簡易ロックを掛けるシーン――亡くなった祖父の工具箱。その道具を“今使おう”と決めた時点で、“オカンにはナイショの夫婦ごっこ”は愛ではなく“例行”になっている。読者は細い針金の軋みだけで、ふたりが恐怖から逃れる逃げ場を知っている。そんな“日常の幽霊”が胸をかきむしる。
逆NTRが好きだから――と単純に胸を高鳴らせたら、作者は「兄弟ごっこから恋ごっこへ」の手繰り寄せをまるで血の巡り のように丁寧に追う。たとえば第3話でひなが朝食に味見をさせようと箸をくわえる瞬間、タカは「ごめん、まだ毒味みたい」とふざけて箸を返す。普通の兄妹なら「うわっ」で終わるところが、ひなは激怒して――いや、震えながら――「もう毒味なんていらない」という。ここで兄妹ゲームは終わる。逆NTRで“奪われる”のではなく、ふたりは日常という第三者を自分たちの外側へ追い出す。だからこそ読んでいて新鮮どころか、むしろ“恥ずかしい”という感情が湧くのだ。
絵柄は細い線と大きな瞳、けれど口元は何かを噛みしめたくなるほどわずかに歪んでいる。それが興奮を覚える読者の罪悪感をあおる。たとえば夜の廊下を歩くひなの姿――裸足にスリッパをはいたコミックのカットの数秒後、スリッパだけが置かれているのだ。キスをするときも、瞳の中に相手がいっぱいになるのではなく、瞳自体が引き攣って涙をこぼしそうになる。こんな描写は大人向けBLですら滅多に見ない。股間を刺激するのではなく、背筋を凍らせる線の使い方だ。だからFEELもしにくいのに、読後数時間たっても首筋が熱い。
最後の描き下ろしページ――二人が布団に入り、言葉を交わさず指を絡ませるシーン――で気づく。これまでの8話は前振りにすぎない。タカは「今日からが家族」だと呟くけれど、ひなは「恋人でよかった」とだけ頷く。横長のカットがぐるりと時間を巻き戻していく。“兄弟”を捨てたことが“恋人”を成立させる瞬間、その交差点に立たされたときの気持ちいい痛みを、作者は実に鮮やかに固定した。
気になる点
カット多めな絵柄でテンポを速くできているのは好みだが、もう少し会話に余裕を持たせて“家族”という偽装の甘さを味わいたかった。
こんな人におすすめ
“逆NTR”で奪う側ではなく奪われる側に感情移入したい人。それ以上に、“兄妹”役を降ろす決断の瞬間を「この匂いだけは忘れられない」とでも言いたくなる人。願わくば、読了後に布団に潜り込んで「これから先も仄暗くていい」と呟いてしまうような人。
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