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放課後に「ちょっとだけ寄り道してみたら最後…」って心境になりたい人向け。この記事ではノスタルジックな貸本屋を舞台にした‘狩る女’בやられ男’の逆NTRがどんな味わいか、可笑しさと焦燥感が絡み合う描写の魅力がわかります。


作品概要
| タイトル | ハナマル印観察日誌 |
|---|---|
| 作者 | Black Pepper |
公園の向こうにぽつんと佇む貸本屋「ブックハウス木下」を見つけた日から高校生の浩二(ひろじ)は毎日匙を投げるようにページを捲っていた。薄暗い店内でふと視線を上げると、レジ奥の女性店員・はなこさんと目が合う。大人びた眼差しにじっと見つめ返され、気づけば「観察日誌」を提出するようにまた次の日も足が向く。重たいガラス戸を開けるとほうきで床を掃くスカートから覗くふくらはぎ、棚の陰から何気なく差し出すストロベリーミルク、貸出カードの裏に書かれた「返却期限まであともう少し」という文字。ゆっくりしか動かないはずの秒針が少しずつ食い込む五月の糸雨。借りた本を廊下で読んでると陰り止まらぬ木漏れ日。――気づけば、浩二は「今日も来ちゃった」と呟くだけで足はもう勝手に歩き、貸本屋は彼の退屈な日常を蒸し返す鍋の蓋のようにぴたりと蓋をしてしまう。
作品の魅力
貸本屋のテラスに置かれた古びたビニール製恐竜模型。汚れた球体関節人形並みの作りだけど、扉の開閉と連動して首がぎこちなく動く仕掛けがあるらしく、はなこさんは「棄権してた客の代わりに」と、その首にハンカチでリボンを結んで外に吊るす。結局その日は、戻ってくるはずの退屈な夕焼けを横目に、浩二は無遠慮な日射しから逃げこむように陰へ引き摺り込まれてしまう。誰もいない本棚の奥でぐしゃりと折られたまんまの別冊少年マガジンの束の陰になり、ふいに自著資料として「観察日誌7049日目」と題された新作のプリントを胸に押し付けられる。この時点で彼女は、まるで読者紛失証明書を提出する小学生のように、呆れたような視線で「別に今日で終わりでもいいんだけどね」と微笑む。
くちびるの隙間からスティックの先端を舌で転がすような音。たとえば返却期限を過ぎた浩二が汗ばんだ掌で門限を気にしながらレジを覗いた場面では、ハガキサイズのコピー用紙が「もうお家帰っていいよ」と穏やかに呈示される。その紙には手描き図柄入りの「貸本屋閉店後ルート」が描かれていて、裏街道や公園裏の倉庫がうっすらと雨染みで重なる。肝が据わらぬ浩二が「俺は…明日も来る…かも」と呟くと耳元で囁くように「来なくなったら寂しいなぁ」と書き言葉が消しゴム跡のように消えていく。先行きを左右する図がなぜかアトランダムで無責任な赤線でつながれていて、あれほど素直に従うべきルートが夕闇に紛れるようにして霧消する。これぞ逆NTRの肝、一方的に追いかける側が「やられ男化」する刹那を、貸本屋外の街灯の切れ間で細かく見せられた瞬間だった。
絵柄は色鉛筆画のような微かなラフさで、はなこさんの瞳にだけ光沢を強調する手法が『彼女が誘(わな)なら』などの応用に疲れた人間にも刺さる。一度描かれたテイストで味見が難しくなるディテールは不要に散らばらず、逆に“観察する側”として浩二が見誤りそうなヒントだけを茜色のコントラストで削ぎ落とす。劇中劇のように「観察日誌」のページが差し込まれる演出は最初こそ混乱を誘うが、読み進むうちに「なんだか自分の手元に観察者じゃなく、観察される物体」が置かれているような錯覚へと持ち込まれる。ページ数42Pと聞けば物足りなさを感じる人もいるだろうが、組版の息づかいとラフ原稿の再生産が混在する詰まり具合が、たった半程の余韻を最大限広げる。特に最終ページ、木下商店のシャッター半開きの写真が実写サイズで張り付けられ、そこに置き去りにされた借り放題カードの束。表紙に散りばめたハナマル印の位置が、選択肢のない恋愛を象徴するようにズレていく。目を離せば鉛筆線が蛋白質のようにコラーゲン化して、読者の掌にべたりと密着する。物語が終わることで逆に現実の標識が歪む、そんな余韻にしかし心地よさをふわりと残す技法も冴えている。
気になる点
ライトノベル枠を思わせる世界観なので、ガチハードな絡みを期待すると肩すかしに終わる可能性あり。逆に細い糸で結ばれた闇雲な関係ゆえ、彼氏視点に拘った裏返しを描こうとするともう一押し欲しくなるところも。
こんな人におすすめ
「寄り道して寄り道に取り憑かれる」征服願望よりも「いつの間に私がここにいた」錯乱感を求めている人。
居心地の悪ささえ心地良くて、読後に喫茶店で無遠慮な観察者になった気持ちで不動産広告を眺めてしまう、そんなひねくれた満足感が好きな人。
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