夕暮れの花蜜

ビフィダス

退廃的な浮気劇よりも、日常と背徳がかみ合う瞬間の疼きを楽しみたい人向け。この記事ではビフィダス氏の最新短編集『夕暮れの花蜜』が描く「家族のすきま」の描写、妊娠願望と肉欲のダブルの甘苦さがわかります。





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作品概要

タイトル夕暮れの花蜜
作者ビフィダス

人妻・アンリさんは子どもを授からず悩みながら、夫以外の温もりに体をゆだねる。書店で働く無垢な栞さんは一瞬の瞳合わせで覚醒し、従姉妹の蘆花さんは田舎の風景に紛れて欲望を曝け出す。陸上部の橘アスマは部活の後、教師の強張った理性を自らの汗で溶かしていく。そのほか幼い頃に離れていたいとことの再会が、過去と現実を交差させながら皮肉な形で実りを迎える。

作品の魅力

目に飛び込んでくるのは夕方特有のオレンジライン。窓枠から差し込む光がアンリさんの白い腹を半端に照らし出すと、妊活という喪失感が逆に疼きを誘う。肩を丸めて受け入れるたび汗がぽたりと落下し、それが妊娠したら一滴の母乳になるだろうという想像が、姦通の苦さを増量する――このギャップがビフィダスの底値。

たとえば栞さんの章では、表紙をめくる音の響きを聴覚ごと味わいながら、読んでいる側とされている側が区別がつかなくなる。越境した挙句、いつもの帰宅時間が恐ろしくなる瞬間が描かれる。こうした「日常リズムのズレ」は淫靡なだけでなく、翌日の時間割にも響く。

陸上部エピソードは懐かしい。走り終えての雑談や顧問の野暮ったい言い訳。しかしアスマが「先生、私よりよく動けるんでしょ」と図星を突くと、先生の保身と指導者としての理想の綻びが音をたてて割れる。夕陽に映える短いショートパンツの裾から、期待と罪悪感が滲み出る。この“体育会系おねだり”、積極的な少女の方から嘘を暴く構図は新鮮だ。

いとこと再会のラストでは、幼さの名残と大人の余裕の狭間で煮えたぎる感情が、叔父さんの酔いに紛れてたどり着く行き場が見事。川沿いの土手で昔通ったバスの音がするだけで、あの日とは別の予感が首筋を這う。結果的には子どもを望めなかった過去をめぐる回帰劇だが、作中で実際の親子の姿は見えない。そのぬるさが逆にリアルな親密さになり、ロマンチックなフィナーレを潰さない絶妙な距離。

気になる点

ページをめくっても「栞さん」「蘆花さん」などの見出しがないため、読者には誰の章か数秒わからなくなる。キャラクターごとの香りが強いだけに、もう少し目印があるとスムーズだった。

こんな人におすすめ

暴露される快感じゃなく「暴露してしまう」場面を好む人。家族や教師という境界を自ら踏み越える積極的ヒロインの視点を求めている人。また、妊活の切なさと背徳の甘さが一章で味わえる落差を欲する人。

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